社団法人山梨県情報通信業協会 要望書

TOP
YSA要望書 ICT社会への歴史
情報通信月間2008
情報通信月間2007
シンポジウム2007
HOME
[戻る] [UP]

編注・この文書のソースは山梨ITビジネス産学連携協議会(Yamanashi IT Business Consortium:YITBC) ホームページにある「2008-01-29 山梨県情報通信業協会飯室会長が県に甲府駅北口にICT拠点整備を要望」 (PDFファイル 150KB)」です。
この記事中のリンクは編者のメモとして追加しています。山梨県ITの動向についてはICT社会への歴史で整理継続中です。

高度ICT拠点施設の整備について

山梨県知事 横 内 正 明 殿
平成20年1月28日
社団法人山梨県情報通信業協会
会長 飯 室 元 邦

国においては、平成16年12月、「u-Japan政策」を策定し、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ブロードバンドネットワークに接続できる「ユビキタスネット社会」を2010年までに実現することを目標に掲げ、情報通信技術の進展に伴い顕在化した新たな要望や、少子高齢化をはじめとする様々な社会的課題を解決する手段として、ICTがその期待に応えていくため、平成18年9月には「u-Japan推進計画2006」が策定され、進捗状況に応じた重点的な取組が進められております。

急速にグローバル化する産業活動に対応するためには、適時の情報収集・把握は欠くことの出来ない要件であり、デジタル情報をインタラクティブに送受する「高度情報ネットワーク」として、本県では、平成18年8月、「山梨県情報ハイウェイ」が運用開始され、その運営管理は、当協会員が核となり組織された「(株)デジタルアライアンス」が受託し、情報先進県を目指し、全国に先駆けて官民連携による運営が行われております。

「山梨県情報ハイウェイ」が稼働することにより、地場企業が県内はもちろん地域を越えた産業間の情報交換を可能にするブロードバンドネットワークに、安価で安全に接続することが可能となっております。

「暮らしやすさ日本一の県づくり」を基本理念に、知事が提唱する「力みなぎる・やまなし」を実現するためには、地域が自立して、地場産業の振興、経済活動の活性化に取り組み、地域経済基盤の強化、世界規模で展開する企業活動に対応出来る体質の強化に向けて、これまでに整備された情報環境を活用し、県内企業及び地場産業がICTの導入による経営改革の推進を図ることが必要であります。

このような中で、高度情報化拠点の整備は、県内企業及び地場産業のICT化を促進する情報通信産業の振興、製造業とICT企業との連携による物づくりの高付加価値化を推進する上で、早急に取り組まなければならない行政課題と位置づけ、北口県有地を高度情報化拠点として整備すべきであるとする横内知事の考えに、私共は、強く賛同し、ご支援するものであります。

情報通信産業は、首都圏においては緩やかな拡大傾向にあり、システム等管理運営受託も引き続き好調が予想され、情報通信白書(平成19年版)では、実質GDPの12%(金額にして67兆円)を占め、GDP成長率の40%以上を牽引していると高く評価されております。

こうした状況にある情報通信産業を地場産業振興のリーディングインダストリーとして位置づけ、山梨県工業技術センター財団法人やまなし産業支援機構、及び山梨大学をはじめとする各教育機関との連携を深める中で、ICT企業の育成、支援を推進することにより、地場産業全体の振興を図るべきであると考えます。

当協会の規模は、参加会員数64社、従業員数3,500名、売上高760億円を超え、地場産業振興に向けての牽引役として、地域経済の発展に寄与できるものと確信し次の通り要望いたします。

要 望 事 項

1 高度ICT拠点施設の整備

経済施策・産業振興策を推進する上で、先端科学技術と物づくりとが融合した新たな視点に立った産業の創成、ICTを活用した様々な産業の効率化や高付加価値化によるポテンシャルの高い産業の育成が重要であり、地場産業とICT企業とが連携した新たな企業活動の展開、先端科学技術・高度情報通信技術の集積が可能な環境の整備が必要であります。

また、企業活動のグローバル化に対応するため、高精細なコンテンツの送受により 膨大化する情報を、県域内において高速で安全に処理し、国内外との情報受発信を可能とする「地域IX機能」を備え、高度にICT化された「情報先進県山梨」を象徴する「インテリジェント施設」を首都圏と隣接県とのクロスポイントに位置する甲府駅北口に設置し、本県と全国とを結ぶ地域産業振興の核となる「経済産業エリア」を整備することが望まれます。

「甲府駅北口地区」には、新県立図書館、NHK甲府放送局の移転が決定しており、「放送と通信との融合」の動向を踏まえ、ブロードバンドネットワークを基盤として、同地区が新たなコンテンツ産業の集積地となることが期待されます。

(要望項目)

・県内企業及び誘致企業が安価で安全に利用可能な、地域IX機能・ファシリティー・セキュリティーが整備された「ICTビジネスプラットホーム(仮称)」の設置
なお、「ICTビジネスプラットホーム(仮称)」の運営管理は、「山梨県情報ハイウェイ」のネットワーク管理機能を移行させることにより、県内ICT企業が行うことが可能となります。

・先進的なICT企業の立地により高度情報技術の地場企業への移転や新たな需要の創出が期待されることから、核となるICT企業の誘致への積極的な取り組み

・新たなICT企業、ベンチャー企業を育成・誘致するための、「インキュベーション施設」の整備

・ICT企業の誘致は、頭脳誘致でもあることから、技術者・研究者が情報交換・収集活動を行うことの出来る場としての「ナレッジコミュニティー」の設置

2 ICT技術者の育成・確保

システムエンジニア(SE)は全国的に見て、15万人が不足(日本経済新聞による)しているといわれており、こうした現象は、既に、システム開発関連企業の域を超え、情報システムを利用する一般企業にも影響を及ぼし始めております。
地域においても、深刻な状況となって来ていることから、産・学・官の連携を一層強化する中で早急に解決しなければならない問題です。

(要望項目)

・高度ICT技術者研修の実施

派遣研修-
先端技術を習得するには、大手企業の中で開発技術者と協働しながら学び取ることが重要であると共に、企業間の連携を涵養することも重要な要素となります。
資格取得研修-
システム開発を受注する上で、ベンダー資格の取得は不可欠の条件であり、大学等と連携して、高度な技術研修を行うことが必要です。
先進技術研修-
情報通信技術は、導入、改廃が日々行われていることから、身近で適宜に技術研修を継続して行うことが必要です。

・県内教育機関との連携

人材を求める企業と人材を育成する教育機関が、採用者に求める資質、カリキュラムの内容等について、意見交換や検討を行うシステムが必要であり、人材の需要供給の安定を図り、地場産業の振興を図る上で早急に対応が求められます。

・ブリッジSEの育成

外国にシステム開発等を発注する場合、言語(意思の疎通)、習慣の違いにより、大きな損失を被ることが多々あることから、日本語と日本文化を理解し、契約内容について相互理解を深めるSEを育成すること、及び、首都圏に点在するブリッジSEを集結するHUBシステムを構築する必要があります。
ブリッジSEの育成においては、山梨大学と連携し、中国・東南アジアからの留学生を誘致し、修業後は県内において起業が出来るよう、インキュベーション施設との連携を図るなど、継続した支援を行うことも視野に入れて検討すべきです。

・インターンシップの実施

在学中に企業内で仕事を経験することは、就職希望者にとっては、仕事を理解し安心して就職が出来ることになり、企業側からしても人材の確保と定着率をあげることが可能となります。
企業と大学などの教育機関との連携を促進する交流システムを行政の指導の下に構築する必要があります。

3 ICT企業の育成・誘致

県内において企業活動を行っているICT企業は、首都圏で急増しているICT案件を大手企業から受託するか、技術者を派遣して協働するかが経営の大きな部分を占めている傾向にありますが、このICT需要を元請けとして県内において消化出来るよう、県内ICT企業の技術レベルの向上、元請けとして受注できる体力の強化、共同受注体制の構築を推進していくことが必要です。

(要望項目)

・ICT企業の集積

「経済産業エリア(甲府駅北口)」にICT関連技術、先端科学技術の集積を図ることにより、高度技術の相互連携、企業間の切磋琢磨による技術レベルの向上が期待され、「科学技術駆動型産業県やまなし」ブランドの形成が図られ、首都圏との事業需給の交流が可能となります。

・ベンチャー企業の誘致

ベンチャー企業支援、ICT環境の整備、インキュベーション施設、インテリジェント施設などの環境が整うことにより、首都圏で企業活動をしている関連企業の「経済産業エリア」への誘致が促進され、新たな先端企業の集積が期待されます。

4 新たな産業の創成

国内外において、競争力を向上させるには、新たなプライオリティーを創造することであり、これまでの成功例から見ると、ハードウェアーとソフトウェアーの連携による製品の開発がキーポイントとなっております。
本県の主要産業は機械電子工業であり、その技術水準は全国的にみても高水準にあることから、ICT企業と連携することにより、競争力の高い、独自のコンテンツを持った製品を市場に供給可能な産業を創成できるものと考えます。

(要望項目)

・システムハウス(組込系ICT企業)の集積

「まねの出来ない物づくり産業」の形成には、制御技術としてICT企業が連携することが不可欠であり、山梨大学、山梨県工業技術センターとの連携を取る中で、早急に先進的に「技術者の育成」、「企業群の形成」を進めることが必要です。

・オープンソースコミュニティーの設置

今後の公共システムの在り方、業務システムの開発の動向から、オープンソースの導入は避けて通れないものであり、これらの技術に関連する企業の集積を図ることが、これからのICT企業の集積に大きな影響を与えることになると考えられます。
積極的に、これらの技術・頭脳の誘致・集積を図るべきであると考えます。

5 情報(ICT)需要における地産地消の推進

県内企業を育成する点からしても、首都圏からICT企業を誘致することにおいても、県内における需要の創成は大きな要件であり、県内需要の喚起とともに、県内での需要は県内で供給する「地産地消」の環境づくりを推進することが必要です。