第186回国会 参議院 国土交通委員会
平成26(2014)年3月13日
以下は国会議事録から辰巳孝太郎議員による質疑応答のリニア中央新幹線関係を抜粋したものです。
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原本は、国会会議録検索システム 参議院会議録 から 第186回国会 国土交通委員会 平成26年3月13日 第2号 で読み出せます。
国土交通大臣政務官 土井 亨 君
政府参考人 国土交通省鉄道局長 瀧口 敬二君
環境大臣官房審議官 鎌形 浩史君
(前段省略)
今日は、リニアの問題、ここを突っ込んで議論をしたいと思うんですね。
2011年の5月に、当時の国交大臣(注・大畠章宏・民主党 2011年1月14日~2011年9月2日)が、全国新幹線鉄道整備法に基づいて、リニア新幹線の営業主体及び建設主体にJR東海を指名いたしました。建設の指示が出ました。
最近は、災害のためとか代替のためとかいうことで、高速道路がもう一本必要だとか、いろいろ、橋が必要だという議論が横行していると思うんですが、このリニアの建設に関しても、リニアでは二重系化ということまで言われております。
もう一本リニア新幹線必要だと、代替、二重系化でですね、これがリニア建設の理由の一つに挙げられているわけでありますけれども、この東海道新幹線老朽化に伴う大規模改修工事があって、そしてそのときには東海道新幹線を長期間止めなければならないので、日本の経済に影響を及ぼすんだというふうにJR東海は説明してきたわけでありますが、その点はこれで間違いないでしょうか。
一般的に、鉄道施設の老朽化対策というものは日頃の維持管理の中でまず対応がなされ、そしてまた、やや規模が大きくなりますとそれに応じた対応というのがなされます。そしてまた、運休をしないようなレベルでの改修工事というものがなされることがあります。
しかしながら、例えば鉄橋の本体構造物などがかなり老朽化してさびているとかいう場合、これ自体を取り替えなきゃならぬということが仮に生じてまいりますと、当然そのような場合には運休する必要性といったことを検討する必要があると、こういったことになると思います。
そこで、御指摘のリニアでございますが、リニアについては、当然のことながら、リニアの開通前に東海道新幹線を止めるということは、現在東海道新幹線が担っております東京―大阪間を中心とする高速鉄道の機能を大きく阻害することになります。
そこで、リニアができれば、リニアが開通いたしますと、その開通した区間、東京―名古屋あるいは東京―大阪につきましては、東海道新幹線についても運休を含めたような非常に大掛かりな構造物の取替えといったことが行えると、こういったような問題意識をJR東海は持っているというふうに考えております。
もう一つ驚いたのは、この老朽化対策によって今後何年ぐらい使えるのかと、これが物すごく延びるということをJR東海は言っているんですよ。これ、実は50年延びると。150年延びると報道しているところもあるぐらいなんですね。このことを認識されておられますでしょうか。
御指摘のように、JR東海は今年度からいわゆる大規模改修工事に着手をいたしました。これは、本来であれば平成30(2018)年度から着手をする予定でございましたけれども、笹子トンネル事故がありましたので、私どもの方から大規模改修工事の前倒しを検討するように指導いたしまして、その結果、25(2013)年度から大規模工事に着手したわけでございますが、当然のことながら、この大規模改修工事で東海道新幹線を止めるということはできません。
したがいまして、止めない範囲内でできる最大限の大規模改修工事を現在行っているということでございます。具体的には、橋梁の接合部の補強であるとか、橋桁の部材の取替えであるとか、こういったことは、現在、運行には支障を与えない範囲内で実施をできると、こういったものでございます。
その上で、これが一体何年もつのかということでございますが、これについては確たる見通しというのは誰も多分持っていないんだろうと思います。というのは、老朽化というものは日々の維持管理を行うことによって寿命が延びてまいります。言うまでもなく、明治時代に造られたれんが造りのトンネルというものが維持管理をしっかり行いますと現在でも使えているというような例がございます。
ただ、場合によっては、どうしても鉄橋の取替えであるとか、あるいはトンネル自体の造り直しをしなきゃならぬというふうな状況、地形などによっては生じてくるということでございます。したがいまして、日々の維持管理と一緒に併せて検討する必要があるというふうに考えております。
東海会長の葛西氏は、ある雑誌のインタビューの中で巨大地震への備えはと、こう聞かれて、東海道新幹線は施設の補強などの地震対策を行っており、想定される地震で長期間止まることはないと、こう答えているんですね。
私言いたいのは、2011年の時点で想定されていないような、答申を行ったときに想定されていないような新技術というものがJR東海で開発されて行われていると、だから当時の議論とは少し違った様相になってきているということを私は改めて言いたいと思うんですね。
それでも大地震が来たらどうするんだと、バイパスで必要なんだという方がおられるんですけれども、しかし、リニアだって大地震が来れば本当に安全、安定なのかというのは誰だって分からないわけですよ。
公益財団法人の日本自然保護協会は、南アルプスを横断するこのトンネルは常に断層変位や隆起による地殻変動、変位によって破壊される危険を有しているとして、幾つもの活断層を横切るリニアは人命を軽視していると、このリニア事業の凍結を求めているわけであります。私は、このリニアの建設、そもそも採算が取れるのかというところも疑問たくさん出されていると思うんですね。
これから、大臣、よく言われるように人口減少時代、入ってまいります。
最新の日本の将来推計人口によりますと、今年2014年と2045年、つまり東京―大阪間ですね、この比較では、総人口1億2千6百万人から1億2百万人へと減少すると。
私、次が大事だと思うんです。15歳から64歳までのいわゆる生産年齢人口、これ現在では7千7百万人でありますけれども、これが5千3百万人、つまり2千4百万人減少すると。一方、65歳以上の人口というのは現在の3千3百万人から3千8百万人、5百万人増えると。
2060年までこれ見ますと、人口そのものが8千6百万人、生産年齢人口が4千4百万人、つまり今よりも3千3百万人、43%も15歳から64歳までの人口が減少をするということになっているんですね。
ところが、JR東海の試算ですね、収支の試算では、名古屋の開業時で10%、大阪開業時で15%の収入増が見込めるというふうになっております。
リニア中央新幹線につきましては、交通政策審議会の中央新幹線小委員会におきまして20回にわたりまして有識者の皆様に幅広く御議論をいただいております。この中で、経済社会情勢について様々な前提条件を設定して需要予測を実施をしているということでございます。
まず人口の方でございますが、国立社会保険人口問題研究所の日本の都道府県別将来推計人口 などに基づきまして、将来における人口の減少を前提としております。
御指摘の生産年齢人口の割合の変化に特化した分析につきましては特段行っておりませんが、一方で、JR東海の経営状況に関する長期試算見通しの検証につきましては、経済成長率が0%という最も厳しい想定に基づいた需要予測に基づいて試算を行っているところでございます。
交通政策審議会の中央新幹線小委員会でも独自に別のまた調査をしておられますね。それではどうですか、人口の中身、構成、これ加味してやっているんですか。これ簡潔に。
ただいま申し上げましたのが交通政策審議会における需要予測の問題でございまして、これは、先ほど申し上げましたように、生産年齢人口の割合の変化に特化した分析というのは行っておりませんが、経済成長率については非常に慎重な手堅い見方をしているということでございます。
新幹線の利用というのは、これ誰が見てもビジネス客が大半なんですよね。そのビジネスで、15歳から64歳までの人口が3千3百万人、2060年までに減るということを加味していない試算というのは、私はあり得ないと思います。
甘い見積りで失敗した事業というのは、もう言いませんけれども、数知れません。ずさんな需要予測で採算が取れないことが想定される。これだけ大きな事業で、JR東海が独自でやるんだからと言いますけれども、これ一企業に任せる、私はこんな危うい事業というのは絶対推進してはいけないと、見直すべきだというふうに言いたいと思います。
リニアに関してはこれだけではありません。環境に与える影響、これも重大であります。
昨年(注・2013年9月20日)、環境アセスの準備書がJR東海から出されました。事業予定地の周辺自治体から意見がたくさん出ております。その後、アセスの結果の修正、評価書、が行われる予定になっております。
お答え申し上げます。
御指摘のとおり、今準備書の手続中であると承知してございます。
その後、まず事業者は関係知事等の御意見を踏まえていただいて評価書を作成いたします。その評価書は速やかに許認可権者である国土交通大臣に送付をされます。さらに、その評価書は国土交通大臣から環境大臣へ送付されると、こういう手続になってございます。
水枯れ問題、先ほど大井川の話がありましたが、私、山梨県の御坂トンネルというところに行ってまいりました。これ実験線が通っているところなんですね。年間の湧水量、これが660万キロリットル出てきたと。山梨県というのは全国一のミネラルウオーターの生産県で、年間93万キロリットルなんですよ。それ以上の湧水量が出てきているということであります。大井川は先ほど毎秒2トンの水量減少になると。しかし、JR東海はこういった影響は少ないという、そういう環境評価の準備書を出しているんですね。
1月に静岡県静岡市の意見書というのが出ておりまして、大井川についてはこう言っております。河川上流部での毎秒2トン程度の水量減少は小さくない、大きな変動値であり、自然環境や下流域の生活、経済活動を始め様々な影響が懸念される、こう言っているんですね。
私は、この水がれ問題だけではないと思います。一番大きな問題の一つは、残土問題だと思うんですね。
私ども、まだ評価書が送付されておりませんが、準備書、公開されている準備書で見る限りの状況をお伝えいたします。
先ほど、全体で6千3百万立米余りの残土ということでございますが、このうち私どもがお聞きしておるのは、山梨県の一部と、それから静岡県についての発生土の置場の候補地が示されているというふうにお聞きしてございます。
これから環境影響評価の意見を環境省、国交省が出した後に、工事実施計画の申請が行われて、国交省が認可という運びになるんでしょうけれども、しかし、この残土の処理の問題、この問題が解決しないと私は建設できないというふうに思うんですが、これ大臣、どうでしょうか。
ただいま委員御指摘の建設発生土につきましては、環境衛生評価準備書の中で各都県ごとの発生量の予測が今なされているところでもございます。
そして、その中に、実行可能な範囲内での再利用及び再資源化を図る、再利用及び再資源化ができない場合は、関係法令を遵守をし、適正に処理、処分をすると、対応を講じる旨が述べられております。
今後、JR東海からは沿線自治体からの意見を踏まえた環境影響評価が国土交通大臣及び環境大臣に提出される予定であり、JR東海に対して建設発生土を含め、適切に対応するよう指導してまいりたいと思っております。
静岡市が今年1月に提出したこの準備書への意見書では、世界自然遺産で求められるクライテリアは非常に高い、これからエコパーク申請、自然遺産に登録しようという話になっているけれども、この本事業と世界自然遺産登録との両立は難しい、こう言われていますと。ユネスコのエコパークについても同様に、阻害要因となる可能性が高いと考えますというふうに指摘をしているわけであります。
私は、このリニア建設に関しては、建設そのものの大義、収益性、環境問題、中間駅の乱開発の計画等々、問題が私は多過ぎるというふうに思っております。
3.11の東日本大震災から3年がたちました。東日本の震災、福島第一原発事故以降、自らのライフスタイル、とりわけ電気の消費を見直さなければならないと考える人が少なくありません。東海道新幹線の3倍の電気の消費を伴うリニアは本当に必要なのかと、速いことはええことだと、これだけで巨費を投じるリニアの建設、これ意義、必要性は私は薄弱だと言わなければならないと思います。
総工費は9兆3百億円であります。これを夢の超特急とかアベノミクスだと、オリンピックだとあおることが私は政治の責任、仕事ではないと思います。人口、とりわけ生産年齢人口が減っていくことを受け止めて、経済成長偏重の政策を見直して、そして何よりも大自然に対して謙虚になること、私、重要だと思います。
大臣は、リニアの建設、人の流れを劇的に変えるとおっしゃいました。しかし、人口減少時代に備えようと、40年、50年先の国土のあるべき姿を論じておられる大臣が、人の流れも働き方も、また航空行政もライフスタイルも都市の在り方もがらりと変えてしまう、それも多数の方々が望まないような方向に変えてしまうおそれのあるこのリニアに関しては余りにもビジョンが欠落していると私は思います。
こんな大変な大事業がほとんど国会で審議がされておりません。私はこのリニアの建設には反対の立場でありますけれども、推進の立場の皆さんも、実際にどのような問題が起きるのか、国会として話を聞く場をちゃんと持つ、調査をもう一度し直すということを提案して、私の質問を終わります。