こういうところで意見を述べさせていただくこと、大変光栄でございます。
資料がたくさんございますが、時間が限られておりますので、飛ばし飛ばし御説明をしたいと思います。
まず、1ページ目をごらんください。
議論の前提でございますが、公共事業と民間がやっている事業では、おのずから議論の視点が違っているだろうと思います。特にリニア中央新幹線は、JR東海の純民間事業としてスタートし、その大阪延伸には社会的に大きな意義があるため、それを早期に実現するためのインセンティブ政策としての法改正であると理解しております。
意見の内容として、そこの下に書いてあります4点でございます。
2ページ目をお開きください。
まず、リニア中央新幹線の意義でございますが、日本と地域の活性化、特に、1時間圏に人口7千5百万人が存在しているという世界最大の都市圏形成がされる、この効果は大変大きい。
2番目に、都市間競争が大変激しくなる傾向がございます。例えば、アメリカで、GEの本社がコネティカットのフェアフィールドからボストンに移転をいたしました。各州がとり合いをしております。アメリカ全体で人口が減っているのに、アメリカでも今回のセンサスで人口減少の都市問題が大変大きな話題になっている。これは典型的な都市間競争でございます。トヨタの本社が豊田から京都に移ったようなことで、大変驚いている次第でございます。
それから、20年に及ぶデフレの長期不況への景気対策としての意義でございます。日本の景気対策はどちらかというと単年度志向でございましたけれども、80年代、アメリカ、ヨーロッパで20年間不況が起こったとき、最大の景気対策は、当時民活と言っておりましたが、駅周辺開発でございました。我々も、20年間を超えるデフレで、こういう事業が景気対策として大変意義があると思っております。
また、地域活性化の王道は圏域構造の改変でございまして、シルクロードとかローマ街道とか、文明とか経済構造の変革をもたらしたのは圏域構造の変革でございますし、高速交通体系も同様に、そのこと自体よりも、圏域構造を変えたいというのがそれぞれの意思ではないかと思っております。
新幹線は、整備決定時にはマスコミ等で大変大きな批判がありますが、でき上がってから批判があったことを全く見かけません。珍しい事業でございます。
3ページ目に行ってください。
人々の生活にも大きなインパクトを与えることは当然でございますし、東海道新幹線の地域交通としての活用も期待されます。海外、国内観光客にとって、このリニア高速鉄道自身が大きな観光資源でございます。
また、災害に対する備え。東海道の大動脈が長期破断すると日本に壊滅的な打撃が及ぶ、こういうことに対するこのプロジェクトの意義もあろうかと思います。
それから、鉄道技術の革新。世界にインパクトを与えたもの、技術だけではないんですが、東海道新幹線、それから羽田の空港アクセス、これは世界最初の空港アクセス軌道でございます、それから、国鉄民営化に続いて、このプロジェクトがそういうことになるのではないか。
4ページ目に行ってください。
リニア中央新幹線の経緯でございますが、実は私、実用化技術評価委員会の委員長を務めておりまして、この実用化に達したという決定をしたときの責任者でございます。
当時を思い起こしますと、各専門分野の委員に、その会議だけではなくて、独自にチームを結成して、世界じゅうでこのシステムが心配だということが言われている全てに答えてくれ、その回答がちゃんとない限りは私はゴーサインを出さない、こう宣言をいたしました。大深度トンネル、磁気影響、火災対策、あるいは建設費、運営費をどう縮小するか、こんなことがございました。
それから、運営主体あるいは事業種別の議論もございました。これは実用評価委員会では別の部隊でございますが、東海道新幹線の線増事業としてこれをやるのか、あるいは中央新幹線の事業か、こういう議論があって、結論的に後者に決定した次第でございます。
JR東海は民間事業を志向しましたが、ただ、投資可能限界から、東京―名古屋間を先行するということになりました。大阪まで行かないと効果が非常に小さいではないか、こういうことで心配しておりました。
また、米国への輸出可能性という議論もございます。
5ページ目に行ってください。
大阪延伸の意義については、新幹線の時間短縮効果が在来線との乗り継ぎ区間にも非常に大きい。
下のグラフ、少し小さくて恐縮でございますが、赤い矢印があるのが、どれぐらい速度が上がったか。表定速度というのは、停車時間も含めた二地点間の所要時間で距離を割ったものでございます。横軸が東京からの距離でございます。ごらんいただきますように、富山とか石川とか、あるいは青森とか鳥取とか、大変広域にその影響が波及してございます。
したがって、名古屋までの時間短縮と大阪までの時間短縮では短縮量が違いますし、しかも、大阪まであることによって、その圏域が非常に広がるわけでございます。
4番目、次のページ、6ページでございます。
その他の論点でございますが、毎日のようにマスコミ等で、人口減少するから、GDPも、あるいは一人当たり所得も縮小するかのような議論がされていることを多く見かけます。しかしながら、人口の減少推定値はマイナス0.4%程度でございます。それに対して経済成長率は、少し古いものでございますが、OECDでも1.3%、少なくともプラスでございます。つまり、ドイツでも、移民も含めて人口減少した時期がございますが、ずっと経済成長は続けてございます。経済成長できなかったのは世界不況のときだけでございます。
したがって、コンマ何%ぐらいの生産性が上がらないというのは誤解だと理解をしてございます。
それから、少し飛ばします。9ページ目でございます。
東京圏の人口は減少するというふうに社人研で推定をされてございます。実は、これは国調があるごとに推計してございますが、社人研の東京圏あるいは東京都の人口予測、昔の人口問題研究所の人口予測は、ずっと間違い続きでございます。したがって、今回も、東京の人口がすぐ減るというのは違うのではないか、私はそう思っております。
それから、飛ばしていただいて、11ページでございます。
交通需要は減少するのか、こういう議論がございますが、東海道新幹線で6時間半から3時間になったとき、我々の生活に大変大きな影響を与えました。お隣の中川先生が京都で会議をやり、東京に来て会議をやり、また帰って講義するというような行動は、東海道新幹線で初めてでございました。
それが、1時間で結ばれるというと、全くまた違う社会でございます。日常生活圏でございますので、例えば、神奈川に住んでいる人が明治神宮に行くのか伊勢神宮に行くのか、こういうことが選択肢になるような、こういう社会でございます。山梨まで15分という、全く違う社会が出てまいります。
品川への近接性は、以下のとおり、名古屋は熱海並み、大阪は静岡、浜松並み等でございます。広島は、空港が遠いこともあって鉄道と飛行機が大体半々、鉄道がやや優勢でございますが、博多も広島並みの時間帯になるわけでございます。
12ページをごらんいただきたいと思います。これは、東京へ観光に来る人が多い順に各県を並べたものでございます。1都3県は含まれてございません。
静岡のところ、一番左でございますが、一番上の赤いところは高齢層で、右の表がございますが、観光客の行動、観光で出かける人がプラスなのか、人口がプラスなのか、それから、活動量というのは一人当たりの観光量でございます。
ごらんいただきますと、高齢者は、人口も流動量も一人当たりの観光量もふえています。その下、就業世代、若年層は黄色でございます。つまり、人口が減っても、一人当たりはふえている、あるいは総量もふえている。東京に来る人は、ずっと全部、ほとんど黄色でございます。
それから次、14ページをごらんいただきたいと思います。これは、東京への業務旅行、仕事目的のものでございます。これも、ごらんいただきますように、ほとんどが黄色でございます。
それから、15ページは、私事で東京へ来る人でございます。東京と地方の交通量というのは大体半々でございます。
そんな調子で、小さいので御説明は控えますが、下の、例えば福岡とかへ行っているところ、東京の欄を見ますと、これまた赤か黄色でございます。つまり、人口は、あるいは交通量は減らないような状況に今あるということでございます。
東海道新幹線は、実は十数年前、十年間ぐらい停滞した時期がございましたが、その後、ふえてございます。