リニア中央新幹線

異議申立書
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異議申立ての理由(抜粋した概要)

2014年(平成26年)12月16日、行政不服審査法に基づき国土交通省に着工認可の取り消しを求める異議申し立てをしました。
リニア着工認可処分の取り消しを求める異議申立書は 5,048通(賛同者数)でした。
以下は、リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会の「リニア新幹線ニュース No.27」(2014.12.13 発行のPDFファイル)で紹介された異議申立書の概要です。(改行のみ編集してあります)

(1)リニア中央新幹線は全国的な鉄道網の整備とは言えず、国民はその実現を求めていない。

国土交通省の整備新幹線問題検討会議は平成21年12月の「整備新幹線の整備に関する基本方針」で、「整備新幹線は、我が国の交通体系にあって、基幹的な高速輸送体系を形成するものである」との認識を示すとともに、「地域活性化、少子高齢化、地域温暖化等諸問題への的確な対応が求められる時代において、厳しい財政の制約も考慮に入れながら、費用対効果、関係地域の取組等整備の意義を十分検証した上で、国民の理解を得ながら計画的に進める必要がある」としている。

(2)リニア中央新幹線は膨大な電力を消費する

リニア中央新幹線の消費電力量について、JR東海は、東海道新幹線の3倍になるとしている。
一方で、4.5倍~7倍とする研究者もいる。これだけの大電力を消費しながらも、リニア中央新幹線の速度は東海道新幹線の倍にも満たない。つまり電気をムダに捨て続ける乗り物である。

(3)リニア中央新幹線の安全性に疑問

JR東海は環境影響評価書の「対象事業の目的」について、東海道新幹線が開業から49年を経過し、将来の経年劣化への抜本的な備えが必要であると共に、大規模地震等、将来の大規模災害への抜本対策が必要であるとの観点から早期に整備するものである」と記している。

(4)南アルプスの自然破壊は必至である

南アルプスは我が国に残された唯一の最大規模の自然であり、一部は国立公園にも指定されている。南アルプスに延長23キロをはじめ多くの山岳トンネルや非常口を設けることは、その工事により、自然環境が回復不可能なダメージを受け、また静穏な環境に暮らす沿線住民の生活にも大きな影響を与える。
6月5日の環境大臣意見は、「本事業は、その規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」と述べている。
リニア中央新幹線の山梨、長野、静岡のルートや、非常口建設予定地はユネスコエコパークに登録された移行地域である。その地域で、非常口や工事ヤード、工事残土置き場などが設置され、残土や建設資材を運ぶ膨大な数の工事車両が走行することは、エコパーク登録の目的や意義を損なう。

(5)地下水の噴出・枯渇の可能性が高い

リニア中央新幹線のトンネル工事に係る地下水脈の現状や水位、流出について、JR東海は環境調査の過程で「3次元透水流解析」を基に、工事による地下水の流出や枯渇は、最新の工事技術を用いるのでその可能性は少ない旨説明している。しかし、地下水の専門家からは、JR東海の解析は30年前の手法を基にして、非定常の現象を定常扱いしており、現状を把握したものではないと指摘されている。
リニア新幹線山梨実験線では、延伸のためのトンネル工事で地下水が噴出したため、JR東海が認めているだけでも沿線3カ所の集落の井戸水が枯渇し、また沢水も消失したことが明らかになっている。
都市部でも地下水の汲み上げ規制の厳正化で、水位が大幅に上昇し、地下トンネル工事にも影響が出ている。沿線には、地下水を生活用水や農業用水に使用している住民のほか、病院や事業所(温泉、工場)も多く、地下水の枯渇は重大な問題である。にもかかわらず、実態調査や、工事中の対策は極めて不十分である。

(6)工事残土の管理・処理方法が不明である

JR東海は、リニア中央新幹線に係る工事で発生する残土(建設発生土)はおよそ6,300万㎥であると明らかにしている。
その残土処理の方法について、他の公共工事や自社事業、農地や宅地の造成などの措置を行うとしているが、その量は少ないと予想される。ほとんどは、非常口周辺の残土置き場に蓄積されるものと予測される。前述のように、その残土置き場が土砂の流出などで周辺の自然、生活環境に影響を与える。

(7)磁界、微気圧波、低周波音について

JR東海は環境影響評価書で、磁界や低周波の人体への影響について疫学的な検証を行っていない。磁界について、山梨実験線での測定データを公表し、車内や軌道脇、軌道下での実測値はICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)のガイドラインを大幅に下回っているとし、安全性を強調している。
リニア中央新幹線の客室内や駅構内、乗降口は磁界の影響を防止するため厳重にシールドされる。そこまで防護措置を講じなければならないほど、磁界のレベルは猛烈に高い。

(8)景観維持や文化財の保護がなされない

リニア中央新幹線のあかり(地上)部分は蒲鉾型のコンクリート製フードで覆われる。また河川部の橋梁部分も高い遮音壁が設置される。山梨実験線ではすでにあかり部分が完成しているが、景観が台無しとなっている。
JR東海は、専門家の検討を経て橋梁部のデザイン等を決め、景観学者からも意見を聴いて決定したと言うが、検討の経過や内容は明らかにされていない。
山梨実験線で見られる平野部や山間部のフードは、「まるで土管列車だ」と言われるほど異様な構造物である。また、実験線ではすでに、フード付き橋梁により農地への日照被害や、風の流れを阻害して霜害などの実害が出ている。
岐阜県可児市では貴重な歴史遺産、産業遺産である大萱地区の古窯跡をまたぐ形でリニア中央新幹線の橋梁が建設される計画である。岐阜県知事や可児市長から「橋梁部分を地下トンネルに計画変更してほしい」との要望が出されたが、JR東海の工事実施計画は計画の変更を示していない。