リニア中央新幹線 ストップ・リニア!訴訟

第4章(1)
第4章(2)
第4章(3)
第4章(4)
第4章(5)
訴状の目次
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第4章 本件認可処分は全幹法および鉄道事業法に違反する

第5 本件認可処分は環境要素に対する考慮を欠き、全幹法および鉄道法に反する

1 本件認可処分にあたり考慮されるべき環境要素

 中央新幹線建設事業は、環境影響評価法施行令別表第一が定める第一種事業に該当するところ、環境破壊に対する十分な検討を行わねばならない。
具体的には、環境影響評価法を受けて制定された「鉄道の建設及び改良の事業に係る環境影響評価の項目並びに当該項目に係る調査、予測及び評価を合理的に行うための手法を選定するための指針、環境の保全のための措置に関する指針等を定める省令」(以下「鉄道建設等環境影響評価省令」とする。)が、環境影響評価項目等について、以下のとおり定めている(鉄道建設等環境影響評価省令4条1項二イ、同20条1項参照)

一 環境の自然的構成要素の良好な状態の保持を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素

イ 大気環境
(1) 大気質
(2) 騒音及び超低周波音
(3) 振動
(4) 悪臭
(5) (1)から(4)までに掲げるもののほか、大気環境に係る環境要素

ロ 水環境
(1) 水質
(2) 水底の底質
(3) 地下水の水質及び水位
(4) (1)から(3)までに掲げるもののほか、水環境に係る環境要素

ハ 土壌に係る環境その他の環境
(1) 地形及び地質
(2) 地盤
(3) 土壌
(4) その他の環境要素

二 生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素

イ 動物
ロ 植物
ハ 生態系

三 人と自然との豊かな触れ合いの確保を旨として調査、予測及び評価されるべき環境要素

イ 景観
ロ 人と自然との触れ合いの活動の場

四  環境への負荷の量の程度により予測及び評価されるべき環境要素

イ 廃棄物等(廃棄物及び副産物をいう。次条第一項第六号及び別表第一において同じ。)
ロ 温室効果ガス等

五  一般環境中の放射性物質について調査、予測及び評価されるべき環境要素

イ 放射線の量
2 環境要素の検討を欠き、鉄道法および全幹法に違反する

 先述したとおり、中央新幹線建設事業に全幹法を適用することは誤りであり、母法である鉄道法が適用されるべきである。そして、鉄道建設等環境影響評価省令が定める上記環境要素からすれば、これらについて環境影響評価を行わないまま鉄道法8条の工事の施工の認可を行えば、当該認可処分は鉄道事業法8条の要件を欠き違法となる。詳細は、第5章において述べる。

 また、仮に中央新幹線建設事業について全幹法が適用できるとしても、鉄道建設等環境影響評価省令が定める上記環境要素について環境影響評価を行わないまま全幹法9条の工事実施計画認可を行えば、当該認可処分はやはり全幹法9条の要件を欠き違法となる。詳細は、第5章において述べる。

 以上、本件認可処分は、地下水脈破壊、発生土問題、工事騒音等、南アルプスをはじめとする自然環境破壊、供用に伴う騒音振動等、電磁波の人体影響、高架部分の日照被害、景観破壊といった環境破壊の可能性のある諸要素を十分に検討しておらず、鉄道法および全幹法に違反する。