リニア中央新幹線

リニアの夢を煽るマンガ・パンフレットの回収を要望

◇ 2018.03.09 子どもたちに「リニアの夢」刷り込むな!山梨県でパンフ回収要望(リニア・市民ネット ブログ)
「リニア・市民ネット山梨」は、先ごろ山梨県が学校関係を中心に配布したマンガパンフレットがあまりに恣意的な内容だとして回収を求める要望書を3月9日に山梨県知事および教育委員会に提出した。内容は次の通り。【本文は原文のまま、体裁のみ編集】
山梨県知事 後藤斎 殿
2018年3月9日
リニア・市民ネット山梨
代表 川村晃生
『リニアで変わるやまなしの姿』を学校から回収することを求める要望書

本年1月に山梨県総合政策部リニア環境未来都市推進室より発行された小冊子『リニアで変わるやまなしの姿』は、すでに県内の小・中学校・高等学校及び市町村役場など関係諸機関に15万部配布されたとのことですが、私たちは同冊子の速やかな回収を求めます。

同冊子の内容を検討すると、所要時間の短縮による経済効果や人口の増加だけが強調されています。そうした効果は、単に一部の機関によって提出された希望的観測にすぎず、多くの研究者や識者が疑いを差し挟んでいます。しかもこの冊子は『リニアで変わるやまなしの姿』というタイトルを付しているにもかかわらず、リニアによって蒙るさまざまな被害やデメリットにはまったく触れていません。

リニアで変わるのは、短縮される時間の問題だけでなく、南アルプスのトンネル掘削をはじめとする甚大な自然破壊や騒音・日照による生活破壊も、取り上げられるべき重要な問題です。

それにもかかわらず、『リニアで変わるやまなしの姿』では余りにも一方的な価値観から作られ、その価値観から外れるものは完全に無視されています。そしてその結果、同冊子は極端に偏向した内容になっていると言わざるをえません。

私たちは県のこうした行為によって、県民が正確・公正なリニアの情報から目隠しされてしまうことを懸念しており、強く抗議するものです。

ところで、こうした冊子を1200万円もの経費を使って作製しただけでも問題ですが、これを県内の小・中・高校の生徒に配布したことは、いっそう重大な問題として取り上げられねばなりません。本来教育は、さまざまな情報や価値観の中から、「どれを選び、どのように自身の中で問題化させるのか」を生徒に考えさせるべきではないでしょうか。

教育基本法第2条(教育の目標)は、その第1、2項において「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い(後略)」、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし(後略)」と定め、さらに学校教育法第21条(教育の目標)は、その第1項に「(前略)公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し(後略)」と定めていますが、この冊子の偏向的内容は、ここに言う「幅広い知識と教養」「真理を求める態度」「個人の価値の尊重」及び「公正な判断力」に抵触するものと言えます。これは、明らかに教育の中立性を侵すものと言わざるをえません。

例えば飯田市鼎中学校、甲府市駿台甲府高校に見られるように学校がリニアについて生徒に考えさせる場合、メリット・デメリット両方の情報を伝え、それを生徒が比較考量しながら自らが判断するというのがあるべき姿と言えます。県はこのような例をこそ見習うべきでしょう。そうあるべきにもかかわらず、今般の山梨県の学校への冊子配布は、根拠に乏しい一つの価値観ばかりを強調し、あたかも確実に未来の山梨はこうなると、生徒たちに刷り込み洗脳させるような押し付け的役割を担っています。これは明らかに行政の裁量権を逸脱していると思われます。

私たちはこの冊子が生徒たちに与える実害を恐れています。従って、一刻も早くこの冊子を学校など配布先から回収することを強く要望するものです。

山梨県教育委員会
教育長  守屋 守 殿
2018年3月9日
リニア・市民ネット山梨
代表 川村晃生
『リニアで変わるやまなしの姿』を学校から回収することを求める要望書

常日頃より山梨県の教育行政にご尽力下さりまことにご苦労様です。 さて本年1月、山梨県総合政策部リニア環境未来都市推進室は小冊子『リニアで変わるやまなしの姿』を発行し、10万部を山梨県内の小学校・中学校・高等学校の生徒に配布しました。

しかし、その内容は、添付の山梨県知事あての要望書に記してありますように、実に偏向した内容で、リニア計画をすすめるうえで、まことに都合の良いことばかりが並べられ、リニアによる自然破壊や生活被害などのデメリットについては一言も触れられてはいません。

 一般に、また原則として、一つの事柄を生徒たちに教えたり考えさせたりする場合、正負それぞれの側面からの情報を与え、それをもとに生徒たちが自分の問題として考えるというのが正しい手法ではないでしょうか。

教育基本法第2条(教育の目標)は、その第1、2項において「幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い(後略)」、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし(後略)」と定め、さらに学校教育法第21条(教育の目標)は、その第1項に「(前略)公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し(後略)」と定めていますが、この冊子の偏向的内容は、ここに言う「幅広い知識と教養」「真理を求める態度」「個人の価値の尊重」及び「公正な判断力」に抵触するものと言えます。これは、明らかに教育の中立性を侵すものと言わざるをえません。

 つきましては、同冊子をご検討の上、また当方の要望趣旨をご勘案の上、同冊子の学校現場からの回収をご指導いただきたく、お願い申し上げます。

【参照】
山梨県総合政策部リニア環境未来都市推進室まんが「リニアで変わるやまなしの姿」発行(平成30_2018年1月30日)
教育基本法
(教育の目標) 第2条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 1 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
 2 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
 3 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 4 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 5 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
学校教育法
第21条 義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成18年法律第120号)第5条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
 1 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
 2 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
 3 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
 4 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
 5 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
 6 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
 7 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
 8 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
 9 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
 10 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。
◇ 2018.03.09 「リニアで変わるやまなしの姿」、山梨県の市民団体が回収を要求(報道記録)
◇ 2018.01.02 リニアで変わるやまなしの姿(出版情報)
2014年9月19日・山梨日日新聞記事
駿台甲府高校
2009年11月12日・信濃毎日新聞記事
飯田市鼎中学1年生

駿台甲府高校 でのディベートの判定は『開通による明確なデメリットが示されておらず、判定の結果、勝者は肯定派、リニア試乗会への応募が殺到しているデータなどリニア人気も示した肯定派に軍配が上がった。』と記されています。

末尾に書かれているディベート部の部長生徒の言葉・・・
 「普段自然に入ってくる情報に疑問を持たなければ楽だけど、それでは影の部分になかなか目がいかない。」・・・ディベートを経験して「社会の中の出来事をいろいろな側面から見て、全体像をつかめるようにしたい」と心掛けるようにしている。

否定派、肯定派に分かれての「ディベート教育」は「朝まで生テレビ」などとは違います。否定や肯定の立場としてどのように議論を展開するべきかを学ぶ場だと聞いたことがあります。その点からいうと、開通によるメリットとデメリットのデータは予測値として妥当であるかの検討は重要ですし、開通までのプロセスで生じるメリットとデメリットについても具体的なデータがあるかどうかの問題を考えねばなりません。これはまさに「いろいろな側面から全体像を掴む」という作業を伴うのです。
プロセスの評価と結果の評価の両方について、リニア中央新幹線事業を理解し判定できる国民は極めて少ないのが実情だと私は考えています。
プロセスについては、2017年12月に発覚した入札不正・リニア談合と呼ばれる事案が、国民が理解していなかった実相を明らかにしてくれるかも知れません。
2018年2月15日・山梨日日新聞コラム(東濃リニア通信から転載)
風林火山・山梨日日新聞

私はこの要望について取り上げた Facebook_リニアを考えよう!コミュニティーFacebook_ストップ・リニア!グループ で以下のようにコメントしました。
 『知事も教育長も他県や県内私立高校での指導状況を知っている前提の要望なので、もしかすると山梨日日新聞が報じていたのかと思いますが、それなら、この子供向け冊子を考案した県庁職員も知っていて、こんな冊子を作成した県政だということになる。恥ずかしい話ですね。』
その後 「東濃リニア通信」 に画像として掲載されているのに気付き、ダウンロードして編集・転載したのです。
上のコラム画像も同じページに掲載されていましたので援用しました。