リニア中央新幹線

第1 監査の請求
 1 請求の受付/2 請求の要旨 (1)請求人の主張 (2)請求人の措置の要求 (3)事実を証明する書面
第2 請求の要件審査
第3 監査の実施
 1 請求人の証拠の提出及び陳述/2 監査対象事項/3 監査対象部局/4 監査の方法
第4 監査結果及び判断
 1 事実関係の確認 (1)リニア中央新幹線の整備について (2)整備方針について (3)本件冊子の作成について (4)本件冊子の配布について (5)本件冊子の作成及び配布に係る支出の状況について
 2 監査委員の判断 (1)本件冊子の内容の妥当性 (2)本件冊子の配布及び広報の妥当性 (3)まとめ

冊子「リニアで変わるやまなしの姿」の作成及び配布に係る損害の補填等を求める知事措置請求の監査結果について

山梨県公報
第1 監査の請求

1 請求の受付
 地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「自治法」という。)第242条第1項の規定に基づく山梨県職員措置請求書(以下「請求書」という。)が、平成30年4月17日、甲府市 川村晃生、中央市 藤田英明 外9名(以下「請求人」という。)から提出された。

2 請求の要旨
 請求書及び請求書に添付された事実を証明する書面に基づき、請求(以下「本件措置請求」という。)の要旨を、概ね次のとおりと解した。

(1)請求人の主張
○ 山梨県は、県内の小・中学校、高等学校の児童・生徒を中心に、リニアの利便性を県民に広報するため、冊子「リニアで変わるやまなしの姿」(以下「本件冊子」という。)を約1,200万円の経費をかけて15万部作成し、平成30年2月初旬に県内の学校や市町村等に配布した。

○ 本件冊子の内容は、山梨県が策定したリニア環境未来都市整備方針(以下「整備方針」という。)に基づいて、漫画によりリニアの利点のみを希望的観測に拠りつつ羅列したものにすぎず、沿線住民や乗客への影響、さらには自然破壊や財政など、国民が背負うことになる負の問題点には一切触れていない。
 リニアによって変わる山梨の姿は、リニア開通に伴う騒音、振動、日照等による沿線住民の生活被害や、南アルプスのトンネル掘削をはじめとする自然破壊、また、リニア実験線への県費の投入や国による3兆円の財政投融資など、様々なデメリットがあるにもかかわらず、それらについては完全に無視し、一言も言及しないという点で、極めて一方的かつ偏向した内容になっており、このような内容の冊子を作成し、県民に広報することは、それ自体大きな過失である。

○ 本件冊子を作成し各学校へ配布する際、教育委員会を経ずに山梨県から直送したことは、手続上適切ではなく、また、情報をコントロールし、生徒に一方的な価値観を植え込もうとするこのような冊子を、県内の公立、私立を問わず、全ての小・中学校、高等学校の児童・生徒に配布したことは、更に大きな過失である。
 このことは、憲法第13条前段の「個人の尊重」及び憲法第26条の「教育を受ける権利」のほか、それらを受けた教育基本法第2条 ・学校教育法第21条の「教育の目標」に示される「幅広い知識と教養」「真理を求める態度」「個人の価値の尊重」「公平な判断力」等に抵触する。

○ さらに、リニアの負の部分や沿線住民等の疑問や苦痛に対しては無視し、何らの配慮も示 されていない本件冊子を作成し広く県内に配布する行為は、憲法第92条に基づく自治法第1条の趣旨(地方自治の本旨に基づく民主的で公正な行政)に抵触するとともに、沿線住民等が有する憲法第14条の「平等に取り扱われる権利」や憲法第13条後段の「幸福追求権」を侵害するものである。

○ 本件冊子の作成及び配布に係る違法性を踏まえると、それらに関する契約自体が無効である。

(2)請求人の措置の要求
 上記のとおり、本件冊子に関する契約は無効であるため、山梨県知事に対して、次のとおり必要な措置を講ずるよう勧告することを求める。

○ 相手方(作成及び配送費・約1,200万円を受領した者)は、不当利得として受け取った代金を山梨県に戻し、同時に山梨県は、配布した冊子を回収し相手方に戻すことを請求する。
○ または、リニアがもたらす被害や自然破壊、財政負担等の冊子を新たな予算によって、住民を交えて15万部作成し、同様に配布することを請求する。
○ さらに、上記の請求が履行不能の場合は、山梨県知事及び山梨県リニア環境未来都市推進室の責任者等は、連帯して代金相当額(約1,200万円)の賠償金を山梨県に支払うことを請求する。

(3)事実を証明する書面
① 冊子「リニアで変わるやまなしの姿」
② 業務委託契約書の写し
 ・リニアで変わるやまなしの姿冊子印刷等業務委託契約書
 ・リニアで変わるやまなしの姿冊子作成業務委託契約書
 ・リニアで変わるやまなしの姿冊子作成支援業務委託契約書
 ・リニアで変わるやまなしの姿冊子配送等業務委託契約書
 ・リニアで変わるやまなしの姿英語版作成業務委託契約書
③ 冊子「リニアで変わるやまなしの姿」配布先の写し
④ 平成30年1月30日付けリ環推第263号-1山梨県総合政策部長から各市町村立小学校長、各市町村立中学校長及び各市町村教育委員会教育長あて通知「『リニアで変わるやまなしの姿』の送付について」の写し
⑤ 山梨県広報誌「ふれあい」特集号 春 vol. 56
⑥ 2018年3月9日付けのリニア・市民ネット山梨代表から山梨県知事及び山梨県教育委員会教育長あての「『リニアで変わるやまなしの姿』を学校から回収することを求める要望書」の写し
⑦ 平成30年3月29日付けリ環推第302号山梨県知事回答「『リニアで変わるやまなしの姿』を学校から回収することを求める要望について」の写し
 平成30年3月29日付け教高第4144号山梨県教育委員会教育長通知 「『リニアで変わるやまなしの姿』を学校から回収することを求める要望書について」の写し
⑧ 週刊金曜日(1177号 2018年3月23日)の掲載記事の写し
⑨ 平成30年3月20日付けの山梨リニア沿線住民の会代表から山梨県知事あての要請書の写し
第2 請求の要件審査
 本件措置請求について、自治法第242条に規定する所定の要件を具備していると認め、平成30年4月25日付けで受理を決定した。
第3 監査の実施

1 請求人の証拠の提出及び陳述
  平成30年5月15日、自治法第242条第6項の規定に基づき、請求人に対して証拠の提出及び陳述の機会を設けた。なお、証拠の追加については、指定した期日までに提出がなかった。

2 監査対象事項
  本件措置請求に係る監査対象事項として、次の点を判断することとした。
 (1)本件冊子の内容の妥当性
 (2)本件冊子の学校等への配布及び広報の妥当性
 (3)違法又は不当と認められる場合の損害の範囲と必要とする措置

3 監査対象部局
  山梨県総合政策部

4 監査の方法
  自治法第242条第4項の規定による監査は、次の方法で実施した。

(1)書類調査及び事情聴取
 監査対象部局に対して関係書類の提出を求め、書類調査及び必要に応じて職員から聴取を行った。
(2)陳述の聴取
 監査対象部局に対し、平成30年5月15日に陳述聴取を行った。

第4 監査結果及び判断

 本件措置請求について、合議により監査の結果を次のとおり決定した。

 山梨県知事に対する措置請求については、請求人の主張には理由がないものと認め、これを棄却する。

 以下、請求書及び請求書に添付された事実を証明する書面、平成30年5月15日に実施した請求人及び監査対象部局の関係職員の陳述、並びに監査対象部局への監査により確認した事実を踏まえた判断について述べる。

1 事実関係の確認
 関係書類の調査及び監査対象部局に対して監査を行い、下記の事実を確認した。

(1)リニア中央新幹線の整備について
 リニア中央新幹線の整備は、全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)に基づくものであり、平成23年5月、国土交通大臣が営業主体・建設主体に東海旅客鉄道株式会社を指名するとともに、 東京都・大阪市間延長438 km を結び甲府市附近を経由する整備計画を決定した。
その後 、環境影響評価法(平成9年法律第81号)に基づく手続きを経て、工事実施計画が認可され、現在、整備が進められている。

 主な経過は下記のとおりである。
・平成 23 年 05 月 営業主体・建設主体の指名、整備計画の決定
・平成 25 年 09 月 環境影響評価準備書の公表
・平成 26 年 08 月 環境影響評価書の公表、工事実施計画申請
・平成 26 年 10 月 国土交通大臣による工事実施計画の認可
・平成 27 年 12 月 南アルプストンネル(山梨工区)の工事着手
・2027年      開業(予定)

(2)整備方針について
① 策定の経過
 山梨県は、平成25年3月、リニア開業を山梨の発展につなげていくため、リニアを活 用した県土づくりの基本的指針として「山梨県リニア活用基本構想」 (以下「基本構想」という。)を策定した。
 さらに、この基本構想を踏まえ、本県の新たな玄関口となるリニア駅周辺(駅の近郊も含む。)における「リニア環境未来都市」の創造を目指し整備方針を策定するに当たり、 幅広い見地から検討するため、平成27年7月、学識経験者や関係市町の首長などで構成する「リニア環境未来都市検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置し、平成28年8月に、定住や産業、観光など8項目にわたる提言書が検討委員会から知事に提出された。
 山梨県は、検討委員会の提言を受け、平成29年3月、県をはじめ県民、市町村、民間 事業者、関係機関・団体などが一体となってリニア環境未来都市の創造に向けた取り組み を進めていくための基本的な指針として、開業までにリニア駅周辺に整備する施設や機能などの基本的内容、開業後を含む将来を展望した今後のまちづくりの目指すべき姿などを 明らかにした整備方針を策定した。

 主な経過は下記のとおりである。
 ・平成 27 年 8 月~検討委員会の開催(計5回)
 ・平成 28 年 8 月 検討委員会から知事への提言
 ・平成 29 年 2 月 整備方針(素案)の決定、公表
 ・平成 29 年 2 月~3月パブリックコメントの実施(意見提出 22 件)
 ・平成 29 年 3 月 整備方針の策定、公表

② 整備方針の概要
 ア 策定の趣旨
  リニアの開業効果を山梨の発展につなげていくため、未来の山梨を見据える中で、本県の県土づくりの一環として、リニア環境未来都市を創造するために 必要な取り組みの基本的内容を明らかにする目的で策定した。

 イ 内容
  山梨県の現状及び将来展望を踏まえ、リニア環境未来都市の基本的な考え方、駅周辺及び近郊の整備における目指すべき姿や、リニア環境未来都市の創造に向けた取り組みなどを示している。

(3)本件冊子の作成について

① 作成の目的
 リニア中央新幹線整備に向けた機運の醸成を図るため、リニア開業が県民生活にもたらす効果や開業後の本県の姿について、幅広く発信するために作成されたものである。
 本件冊子については、平成29年2月県議会に作成・配布に係る予算案が上程され、予算特別委員会における審議において、整備方針等に掲載されているリニアによる移動時間の短縮効果や、定住人口や観光振興などに与える効果、駅周辺や近郊の整備後の姿などについて、県民に情報発信していくために作成するものであり、作成した冊子については、やまなし暮らし支援センターをはじめ、県東京事務所等においても配布し、リニア開業によりもたらされる効果を県外にも発信していくとして、作成の目的などについて答弁がなされている。

② 内容
 本件冊子は整備方針に示された内容に基づき、リニア開業から10年後に想定される山梨の姿の可能性の一つを表現したものであり、リニア開業による移動時間の短縮効果や、産業や観光、日常生活で想定されうる変化、リニア開業による経済効果などについて記載されている。
 本件冊子の作成に当たっては、財務会計上の手続きを経て専門のコンサルティング会社に作成支援業務を委託し、社会資本整備に係る費用対効果を算出する際の方法を用いて経済効果を算定するなど、専門的見地から監修がなされていた。

③ 作成部数  15万部

(4)本件冊子の配布について

① 配布先
 ・県内の小学校、中学校、高等学校、特別支援学校
 ・各市町村、図書館
 ・県内金融機関、市町村観光協会等
 ・県立リニア見学センター、県地域県民センター等
 ・県外(やまなし暮らし支援センター、県東京事務所、県大阪事務所等)

② 学校への配布
 山梨県の未来を担う県内の児童・生徒に広く配布するため、各小・中学校、高等学校等に配布を依頼し、配布に当たっては、事前に県教育委員会総務課、高校教育課並びに義務教育課等と協議するとともに、平成30年1月30日付で、各学校長、県教育委員会高校教育課長並びに義務教育課長、及び各市町村教育委員会教育長あてに、本件冊子作成の趣旨や依頼内容について文書で通知した。
 ・配布時期 平成30年2月
 ・配布先 県内小・中学校、高等学校等 322校

(5)本件冊子の作成及び配布に係る支出の状況について
① 予算の状況
 平成29年度当初予算案に「リニアで変わるやまなしの姿発信事業」として、1,200万円を計上し、平成29年2月県議会において可決された。
② 支出の状況
契約日契約額支出日支出額
リニアで変わるやまなしの姿
冊子作成業務委託
H29. 9.26 4,860,000 円 H30. 3. 5 4,860,000 円
リニアで変わるやまなしの姿
冊子作成支援業務委託
H29. 9.26 969,840 円 H30. 4. 3 969,840 円
リニアで変わるやまなしの姿
冊子印刷等業務委託
H29.12.11 4,341,600 円 H30. 3.19 4,341,600 円
リニアで変わるやまなしの姿
冊子配送等業務委託
H29.12.19 906,120 円 H30. 3.27 906,120 円
リニアで変わるやまなしの姿
英語版作成業務委託
H30. 1.29 900,000 円 H30. 4. 6 900,000 円
合 計 11,977,560 円 11,977,560 円

上記の契約に係る手続き及びその支出については、山梨県財務規則(昭和39年山梨県規則第11号)等に基づき処理されていた。

2 監査委員の判断
(1)本件冊子の内容の妥当性
① 本件冊子の記載内容について  請求人は、まず、本件冊子について、整備方針に基づくリニアの利点のみを希望的観測に拠りつつ羅列したものにすぎないとし、陳述においては、整備方針そのものに疑問があり、十分な検討を経たものとは思われないと主張している。

 本件冊子には、整備方針に基づいて、リニア開業による移動時間の短縮効果などについ ての記述がされているが、整備方針は、都市計画や景観、環境分野等の学識経験者や関係 市町の首長等で構成された検討委員会の提言などを踏まえ、パブリックコメントを通じて 広く県民の意見を募集し意見反映を行うなど、必要な手続きを経た上で策定されたもので あることは事実関係において確認したとおりである。
 さらに、本件冊子を作成するに当たっては、整備方針の内容をもとに、専門のコンサル ティング会社に委託し、社会資本整備に係る費用対効果を算出する際の方法を用いて経済 効果を算定するなど、記載内容について専門的見地から検討を行っており、その内容に重大な事実の誤認や著しく妥当性を欠いている点は認められず、妥当な内容であると判断できる。

② 環境などの問題が記載されていないことについて

 請求人は、本件冊子は沿線住民や乗客への影響、さらには自然破壊や財政など、国民が背負うことになる負の問題点には一切触れておらず、極めて一方的かつ偏向した内容であると主張している。

 本件措置請求において沿線住民の生活被害として挙げている騒音や振動、日照等については、言うまでもなく日常生活に関わる重要な課題であり、監査対象部局の関係職員の陳述において、事業主体に対し引き続き丁寧な対応を求めていくとの発言があったとおり、県においては、現在、リニア中央新幹線の整備に伴う諸課題に対し、法令に基づく環境影響評価手続きや事業主体に対する働きかけなど、沿線の市町や関係機関等と連携しながら対応している。
 こうした中、リニア開業を見据え、山梨の未来や自分たちの将来について、県民一人ひとりに考えてもらうことは重要であり、そのきっかけとなるよう本件冊子を作成したとの趣旨は十分理解できる。
 さらに、本件冊子は上述の趣旨のもと、県議会での議論を経て必要な予算措置がなされ、財務会計上の適正な手続きによって作成されたものと認められることから、請求人が主張するような整備中に取り組むべき課題が記載されていないとしても、そのことをもって本件冊子を作成したこと自体が違法又は不当であると言うことはできない。

 なお、請求人が主張するリニア実験線への県費の投入や国による3兆円の財政投融資などの財政負担については、国や事業主体、関係機関において議論されるリニア中央新幹線計画に係る事柄であるため、監査委員として判断できる立場にない。

(2)本件冊子の配布及び広報の妥当性

① 学校を通じた児童・生徒への配布について
 請求人は、教育委員会を経ずに各学校に直送したことは、手続上適切ではないと主張し、また、陳述において、学校を通じて配布するものは全て準教材と見なすべきとの発言があったように、一方的かつ偏向した内容の本件冊子を学校を通じて児童・生徒に配布したことは、基本的人権の尊重を定めた憲法第13条や、教育の目標を示した教育基本法第2条の規定等に抵触すると主張している。

 本件冊子は、整備方針の内容を踏まえ、次代を担う児童・生徒をはじめ県民一人ひとりに、リニアを活用した山梨の未来を考えるきっかけとしてもらうという趣旨に沿って、財務会計上の適正な手続きを経て作成されたものであり、妥当な内容であると認められることは前述のとおりである。
 また、本件冊子を学校に送付するに当たり、事前に県教育委員会等と協議し、各学校長、各市町村教育委員会教育長あてに、事業の目的や配布の趣旨などを記した依頼文書を送付しており、学校現場に十分配慮した対応を行っているとともに、その依頼文書にあるとおり、教材として使用してもらうために本件冊子を学校に配布したものでないことは明らかであることから、本件冊子を直接学校に送付し児童・生徒への配布を依頼したことが、教育の独立性の侵害に当たるとの主張は認めることができない。

② 県民への配布、広報について
 請求人は、リニア中央新幹線の整備に係る周辺環境への影響等が併記されていない本件冊子を広く県内に配布する行為は、憲法第92条に基づく自治法第1条の趣旨、憲法第13条後段、及び憲法第14条の規定に反し、沿線住民等の権利の侵害に当たると主張している。

 この点についても、当該内容の冊子を作成、配布したことは、その目的、内容から妥当というべきであり、自治法の本旨である民主的で公正な行政はもとより、憲法に定める基本的人権の尊重や法の下の平等に反するとの主張は認めることができない。

(3)まとめ
 本件冊子は、児童・生徒を中心とした県民が、リニア開業後の山梨の姿を感じ取るとともに、山梨の未来を考えるきっかけとしてもらうため、リニア開業の10年後に想定される社会の様子をわかりやすく示すことを目的に、議会での審議を経て予算化され、適正な執行手続きによって作成・配布されたものであり、違法又は不当というべき重大な事実の誤認や社会通念に照らして著しく妥当性を欠いた点があったとは認められず、本件冊子の作成・配布に係る契約は無効であるとの主張に、理由を見いだすことはできない。

【山梨県公報号外 第27号 平成30_2018年6月15日】
大東亜戦争はABCD包囲網で苦境に至った日本国が国民を守るための戦いであったと説明する冊子を子供たちに配布する事に問題は無い、山梨県の監査委員はそのような判断を下したのと同じです。
全体像を把握し理解し、部分最適化では無い全体最適化の姿を想定し、それを目指すにはどのような施策を構築すべきかを熟慮し、地域の人々に問いかけ、人々の代表としての議会で審議を重ねて地域活性化を目指すことが山梨県に求められるポイントです。

単に部分最適化に過ぎなかった過去の施策の失敗から学ぶべき事が多いはずの山梨県政が、リニア中央新幹線事業にのめり込み、彼等が描く未来像に誤りは無いか否かすら検討していない状況が、「リニアで変わるやまなしの姿」に如実に現われているのです。
それすら気付こうとしない、或いは自分達が進める事業に障りある情報はあえて公表せず共有対象から外しているような人々かも知れません。
そのような人々に地域行政を任せ続けている県民自身の責任も大きいのです。

私がこの「リニア中央新幹線の情報」と題したWebサイトを続けているのは、私自身の学習のためであると共に、リニア新幹線に関心ある人々と情報を共有しながら考え続けたいと思っているからです。