山梨県立新県立図書館

新県立図書館整備に関する報告

平成20(2008)年1月24日
山梨県新県立図書館整備検討委員会

現在の山梨県立図書館は、昭和45(1970)年に設置され、以来、40年近く本県の中核的な図書館として、県民に広く活用され、親しまれてきた。しかし、近年、施設や設備の老朽化や狭隘化が進み、耐震性も低い状況である。
また、利用者ニーズの多様化・専門化、情報通信技術の著しい進展など、県立図書館をめぐる環境の変化に伴い、その果たすべき役割や機能も大きく変わっていることから、新しい時代にふさわしい新県立図書館の整備は喫緊の課題となっている。
このため、県では、「新県立図書館整備計画」を策定することとし、この計画策定に当たって意見を聴くため、本委員会を設置したところである。
本委員会では、昨(2007)年5月から8回の会合を開催したほか、8月に県民フォーラムを県内2か所で開催し、新県立図書館のあり方・役割・機能、管理運営など新県立図書館整備に必要な議論を幅広く行い、この間、11月には中間報告を提出した。
この報告は、中間報告の見直しを行うとともに、その後議論した内容を加え成案としたものである。

目次

報告の概要
第1 県立図書館の現状
1 施設等の状況
2 各都道府県立図書館との比較
3 市町村立図書館との連携
第2 新県立図書館のあり方
1 山梨県民図書館の構築
2 基本コンセプト
第3 新県立図書館のサービスの方向
1 役割・機能
2 備えるべき個性
3 子ども読書支援及び関連業務
第4 新県立図書館の管理運営
1 必要とされる人材
2 運営体制
3 利用者サービス
4 運営に対する評価
第5 新県立図書館の施設及び設備
1 施設
2 設備
3 活用
第6 新県立図書館の建設地
おわりに
付 新県立図書館整備検討委員会委員・経過等
 

【報告の概要】

本委員会は、新県立図書館のあり方を、すべての県民に親しまれ、県民とともに成長・発展していく図書館を目指すべきとの観点から「山梨県民図書館の構築」とし、そのための基本コンセプトを「すべての県民のための図書館」、「山梨の文化を支え、創造する図書館」など6つの面からまとめた。
新県立図書館のサービスの方向、管理運営、施設及び設備については、それぞれに関連があり、できるだけ具体的な内容となるよう議論を整理した。
特に、「山梨らしさ」については、山梨県の文化の発展を図る中心的な存在として新県立図書館を位置づけ、山梨を学ぶ場所であること、山梨の入口となるテーマを備えることを提言した。

第1 県立図書館の現状

県立図書館は、昭和45年6月の開館から37年が経過し、施設の老朽化、狭隘化が進むなど多くの課題を抱えており、図書館サービスを通じて県民の学習と文化の発展に寄与するためには、その改善が早急に求められる状況である。
また、甲府駅から徒歩10分程度と比較的近い距離にあるが、主要な通りに面していないことや、駐車場が狭いことなどのため、必ずしも県民にとって利用しやすく、親しみやすい場所に立地しているとはいえない。

1 施設等の状況

県立図書館の敷地面積は2,623平方m、延べ床面積は4,249平方mで、施設は、地上4階建て、地階に講堂、また、書庫は6層の構造となっている。
収蔵能力は、29万冊であるが、現在、書架を増設するなど工夫しながら、図書46万冊、雑誌など逐次刊行物12万冊の合わせて58万冊を収蔵している。このほかDVD、ビデオなどの視聴覚資料や行政文書、国書、漢籍などの特殊資料もある。
年間の図書購入冊数は1万冊程度、資料費は4,600万円程度である。
利用状況は、平成18年度の実績で、来館者数166,705人、個人貸出点数70,081点となっている。

2 各都道府県立図書館との比較(「日本の図書館2006」(日本図書館協会発行)から)

現在の県立図書館の施設等の状況を全国の各都道府県立図書館と比較すると、施設面では、延べ床面積は46位、また、収蔵能力は最下位である。
資料面では、蔵書冊数は最下位、年間購入図書冊数は38位、資料費は36位である。
利用面では、人口当たりの来館者数は22位、個人貸出点数は30位と全国の中程に位置するが、人口類似県(百万人以下)の中ではともに最下位である。

3 市町村立図書館との連携

本県では、県立図書館が中心となって、平成6年に全国に先駆けた図書館情報ネットワークシステムを稼働させ、図書館同士で蔵書を貸し借りする体制を整えるなど、公立図書館の連携に積極的に取り組んでおり、この中で県立図書館は中核的な役割を担っている。

第2 新県立図書館のあり方

1 山梨県民図書館の構築

県立図書館は、誰もが気軽に利用できる施設として、世代や居住地にかかわりなく、すべての県民に等しくサービスを提供することにより、県民の学習と文化の発展に寄与する務めがある。
また、県民の様々な知的要求に応え、活動を支援するとともに、地域の活性化や産業の振興に役立つ知的・文化的な基盤となることが求められている。
一方、県民には、これを積極的に活用するとともに図書館活動への主体的な関わりを通じて、図書館を時代の変化に即したものへと発展させていくという姿勢が期待される。
こうしたすべての県民に親しまれ、県民とともに成長・発展していく図書館を目指すべきとの観点から、新県立図書館のあり方を「山梨県民図書館の構築」とした。

2 基本コンセプト

「山梨県民図書館の構築」という考え方を具体化するための方向として、次のように新県立図書館を整備するに当たっての基本コンセプトを整理した。

①すべての県民のための図書館
・子どもから高齢者までの年代の違いや居住地の遠い近いにかかわらず誰もが利用でき、また、特定の分野に偏ることなく、知識や情報を得たいすべての県民の要求に応えられる図書館
・県民の日々の仕事や生活に役立ち、暮らしと心を豊かにする図書館
②県民が創造する図書館
・図書の貸出、情報の提供など図書館から県民へのサービス提供だけでなく、県民が進んで図書館を利用し、主体的に関わることを通じて、その持つ意義や可能性を見出し、あるべき姿を創り出していく図書館
③開かれた図書館
・知識や情報の世界への入口として、誰もが親しみを感じ、気軽に利用することができる図書館
④成長する図書館
・時代の変化や県民ニーズを的確に捉えながら、県民の学びの場として求められる機能やサービスが何かを見出し、持続的に改善し、発展し、新しい試みに挑戦していく図書館
・本県の中核的図書館として、県内図書館をリードし、元気にしていく図書館
⑤県民の活動を支える図書館
・図書館での学びを通して、人々が集まり、語り合うことができる、様々な出会いと交流の舞台となる図書館
⑥山梨の文化を支え、創造する図書館
・グローバル化の中にあっても埋没することのない歴史に裏打ちされた山梨の文化を継承し、支え、発展させていく図書館
・山梨の学びを通じて、県民のアイデンティティを育み、地域に輝きをもたらす図書館

第3 新県立図書館のサービスの方向

1 機能・役割

基本コンセプトを実現していくうえでの新県立図書館の機能・役割を基礎、応用、展開に分け、次のとおりまとめた。

(1)基礎
①収集・保存・提供
特定の利用者の需要に偏ることなく、すべての県民の利用を想定した収集・保存・提供を行うとともに、後述する「山梨らしさ」に関連する資料については、特に重点的に収集・保存・提供を行う。
ただし、収集に当たっては、市町村立図書館、大学図書館等との一定の分担も必要となる。
図書等の収蔵能力については、近年建設された都道府県立図書館を参考にするなど適切な規模とする。
また、提供に関しては、ICタグの活用、自動貸出機、受益者負担による図書の宅配など、より利便性の高い方法を検討する必要がある。
②レファレンスサービス
図書館サービスの基本である調査相談の分野で、より質の高い、的確なサービスを提供する。
また、専門家と協力したパスファインダー(※1)の作成、データベースの充実等によりレファレンスサービス(※2)の強化を図る。
さらに、情報通信技術やICタグを活用した迅速で高度なレファレンスサービスについても検討する必要がある。
※1 利用者が文献などを調べるための手引き、調べ方の案内
※2 図書館職員が資料や情報を提供する調査相談の援助サービス
③市町村立図書館支援
市町村立図書館への助言、研修内容の充実等により支援の強化を図る。
また、既存の図書館情報ネットワークシステム、相互貸借における物流システムの改善を進め、市町村立図書館と連携して県民の図書館利用の促進を図る。
さらに、市町村立図書館と県立図書館とをテレビ電話など双方向通信で結び、市町村立図書館が行う各種図書館サービスをリアルタイムで支援することも検討する必要がある。
(2)応用
①多様なメディアの取り込み
放送局が所有する映像コンテンツなど報道機関や個人が所蔵している地域資料の収集を検討するなど、従来の紙媒体による図書・資料に加え、映像音響資料、電子資料等近年、発展の著しい多様なメディアを積極的に取り込む。
また、貴重資料を中心にデジタルアーカイブ(※)を計画的に作成し、利用しやすいように公開するとともに、学校教育での活用などより多くの利用に供されるような働き掛けの方法や仕組みを検討する。
※ デジタル技術などを使った資料、情報の電子化による保存、蓄積、提供
②外部との連携
大学、企業等と連携・協力し、共同イベント、タイアップ講座を開催するなど、それぞれが持つ資料や情報を利用した事業の企画開発を図る。
また、県内図書館の館種を超えたコンソーシアム(※)の構築を検討する必要がある。
さらに、子どもの読書推進、図書館運営などでボランティア等の協力を得てサービスを充実させる。
※ 資源の共有を基礎に共同で事業を行う連合組織
③「山梨らしさ」の追求
山梨に関わる資料の重点的な収集を図るとともに、「山梨らしさ」を県内外に発信する企画を取り入れる。
(別掲「備えるべき個性」参照)
(3)展開
①外部機関、県民の活動への支援
大学、企業、市民団体等の学習活動の場を提供するとともに、交流機会の設営、情報提供などにより各主体の活動を支援する。
また、学校や学校図書館などに対して資料、情報の提供を通じた支援を行う。
②交流の拠点
産業、観光、娯楽など、地域資源に関する多様な情報を積極的に提供し、人と人の交流拠点としての役割を担うとともに、図書館を通じた新たなコミュニティづくりを支援する。
③読書推進システムの構築
子どもの読書スペースを確保し、実践しながら子どもの読書推進について研究する。(別掲「子ども読書の支援」参照)また、県民のライフステージに応じた読書の働き掛けのプログラムを企画する。
④行政資料提供・政策立案支援
行政が作成する刊行物など行政資料の収集を徹底し、利用者へ提供していくとともに、図書館の持つ情報を生かし、議会・行政の調査、政策立案を支援する。
2 備えるべき個性

インターネットの普及など情報社会の進展に伴うグローバル化の中にあっては、むしろ自分の住む地域へ目を向け、地域について学び、理解し、発信していくとともに、地域の課題を解決することができる人を育てることが重要であり、これに図書館の果たす役割は大きい。
このため、「山梨の学び日本一」を目指し、新県立図書館には「山梨らしさ」という個性を備える必要があると考え、これを次のようにまとめた。

(1)地域学の殿堂

県立図書館が、本県に関する資料を収集し、提供することは、県民のアイデンティティを育て、山梨を知ろうとする利用者の要求に応える上で欠くことのできない基本的な役割である。
県立図書館は、山梨という地域について学ぶ人にとって、地域学の殿堂となることを目指すべきである。
このため、図書や雑誌、行政資料、地図、パンフレット、地域活動に関する情報等山梨に関するあらゆる分野の資料・情報を網羅的に収集し、提供する。
特に、放送コンテンツ、記録映像、本県ゆかりの作品など映像音響資料を重視した多角的な資料の収集や県民との協働による地域資源のデジタル化の取組も検討する必要がある。
また、納本協力、県民の活動の成果物などの収集や、学校教育での活用、映像配信など、より多くの収集・利用方法を検討する必要がある。

(2)情報発信拠点

本県には、生産量日本一のワイン、富士山をはじめとする山々と緑豊かな森林、伝統的地場産業であるジュエリー産業、各 地の多様な温泉など、全国に誇ることのできる地域資源がある。
また、人と人との結び付きが強くコミュニティを大切にする県民性、高齢者が介護を受けることなく元気に生活できる健康寿命日本一など、地域社会を形成する豊かな特性がある。
こうした他で真似することのできない本県らしい自然、文化、産業あるいは風土などの中から、国内外に発信しうる素材を取り上げ集中的に情報提供する、テーマ性を持った図書館とすることにより、山梨の個性を国内外に発信していくべきである。
例えば、ワインを山梨のイメージを代表するものとして取り上げた場合、その関係図書、生産や歴史に関する資料提供はもとより、県内のワイナリー、レストランの情報なども幅広く紹介し、ワイン文化創造のポータルセンター=情報発信拠点とすることも考えられる。

3 子ども読書支援及び関連業務

子ども読書の支援、生涯学習の推進、公文書の保管の各業務については、特にその扱いを次のとおり検討した。

(1)子ども読書の支援

子どもの読書推進に当たっては、身近な学校図書館(室)、市町村立図書館が果たす役割は大きい。
一方、読書のきっかけづくりとして、読書の楽しさ・魅力を伝えるとともに、親をはじめとする大人たちに、子どもの読書の重要性をアピールしていくためには、様々なプログラムの開発・実施、人材の育成、ボランティアとの連携などが必要となる。
このような観点から県立図書館には、市町村立図書館等の子どもの読書推進に関する取組を支援する役割が期待される。
したがって、新県立図書館は、「子ども読書支援センター」を設置するなど、子どもの読書を推進するための体制を整備し、その機能を果たすべきと考える。

(2)生涯学習の推進

県立図書館は、県民の知的な基盤として図書、資料はもとより、司書によるレファレンスなどその持つ情報や機能を積極的に提供するとともに、様々な交流の舞台となって、生涯学習に取り組む県民のニーズに応えていく役割を持つべきである。
一方、生涯学習は、少子高齢化や高度情報化の進展など社会が著しく変化する中、自己実現のための学習はもとより、新しい知識や技術を習得するための学習活動等、実社会の多様なニーズのもとに展開されている。
こうしたことから、現在、生涯学習推進センターを中心に展開している事業を図書館業務として内包させることは、むしろ生涯学習推進拠点としての重要性をかんがみると、その方向性を狭めてしまう恐れがある。
生涯学習の推進については、図書館と連携しつつ効果的な事業展開が図られる方途を別に検討する必要がある。

(3)公文書の保管等

行政文書・資料を収集・保存・提供する公文書館の機能は、本県の歴史や行政上の行為を調査・研究する上で重要である。
県では、保存期間が満了した行政文書のうち歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として保存することが適当なもの(以下、「歴史的資料」)は、図書館等へ移管することとしており、公文書館がない現状において、当面、図書館等は 歴史的資料を保存する公文書館的機能を果たしていくべきものと考える。
この際、図書館と公文書館との相違、保存スペース確保等の課題もあることから、県においては公文書保管のあり方等を含め、改めて総合的に検討する必要があるものと考える。

第4 新県立図書館の管理運営

1 必要とされる人材

図書館は、本の貸出だけではなく、所蔵する図書などを利用し、様々な利用者サービスを行っている。今後は、サービスの更なる多様化・高度化が予想され、図書館運営の成否は、これを担う「人材」に左右される側面が大きい。
この点から、新県立図書館の職員にはボランティアや大学、企業等と連携、協力し、県民に山梨の文化を伝え、発信していく際のリーダーシップを取ることが求められる。
また、新県立図書館は、独自の講座や資料展示、また大学や企業と連携したセミナーの開催など多彩に活動することが考えられることから、企画を立ち上げ、推進するコーディネーターとしての資質を有する人材が必要となる。
このように、今後、新県立図書館のサービスを拡充していくためには、多種多様な人材を確保するとともに、サービスを適時的確に提供するための意欲と能力を備えた人材を育成していくことが重要となってくる。
特に、中核を担う県職員は、図書館の「地図」として、何がどこにあって、どのように利用できるかを知っていて、判断できる人が必要であり、そういう人材を育てることが重要となる。

2 運営体制

新県立図書館においては、多くの人が、様々なサービスで関係し、協力することが予想されるが、責任となる者が定まらないと混乱し、サービスも滞る恐れがあることから、運営の基本は直営とし、図書館の運営を決めていく業務など、主要な業務については県職員が担うものとする。
一方では、限られた数の職員によって十分な図書館サービスを提供するには、多くの人に協力を得る必要があり、例えば、子ども向けの集会行事、企画展、資料展示や情報活用講座などは、目的・内容に応じその分野で優れたノウハウを有する者に企画・運営を委ねたり、また、施設管理においては業者委託するなど、円滑な図書館運営が行われるよう知恵を絞るべきである。
この点から、ボランティアの協力は大きな意義があり、例えば、子どもへの読み聞かせ、資料の修繕、図書の朗読、セミナーの講師などボランティアが活躍する場面は多く、これまで以上にボランティアの育成に積極的に取り組むとともに、連携を強化していくべきである。

3 利用者サービス

県民の生活スタイルの変化に伴い、図書館の利用形態についても多様化が予想されることから、県立図書館には可能な限り利用者のニーズに即した弾力的な管理・運営が求められる。
このため、開館日は、今以上に拡大する方向で検討するとともに、開館時間は、現状を基本に利用者ニーズに即し、更に検討する必要がある。
また、図書・資料の個人宅配、外部データベースの提供など、図書館の付加サービスについては、その実施に当たって受益者負担の適否、サービス提供の方法・範囲等について検討していくべきである。

4 運営に対する評価

図書館サービスの充実・向上に向けては、具体的業務について目標・目的を明確にし、県民の協力を得ながら定期的に評価して改善を進めるとともに、利用者ニーズに沿った図書館運営に努めることとする。
このためには、評価書を作成するなど、だれが、いつ、何を、どのように評価するかを明確にし、これを経年比較して公表し、充実・向上の状況を明らかにする必要がある。

第5 新県立図書館の施設及び設備

1 施設

新県立図書館は、本県の知的な基盤であり、山梨の文化や情報を発信する拠点としての役割が期待される。
そのためには、施設のデザインそのものに個性、特徴を持たせ、図書館の存在をアピールする工夫をするとともに、時代の動きや県民ニーズの変化に応じて柔軟な使い方ができる施設となるよう特に設計段階において留意が必要である。
また、子どもや高齢者、障害を持つ方などの利用に配慮したユニバーサルデザインの考え方を取り入れ、利用者の立場から見た施設とし、同時に環境保全への配慮、更には後年の維持管理コストを抑制するうえからエコロジーへの取組(投資)という視点も重要である。
個々の施設配置では、図書館で行われている事業や活動については外から見え、また、県民が気軽に施設に入り、参加しやすい構成が必要であり、特に、企画展、資料展示、セミナー、講座などは情報発信の先端部分ともいえることから、これを開催するスペースは入口近くに置くなど、よりオープンな作りが望まれる。
さらに、「静けさ」を保つスペースを確保するとともに、人々の交流や賑わいを生むスペースを空間的な配置や、時間帯に応じた割り振りなどに配慮して創り出していくことも必要である。
一方、書庫スペースの効率的な利用が可能となる自動書庫・集密書庫については、これを積極的に導入するとともに、ホールや会議室などは、図書館の役割と機能に応じた適切な規模となるよう配慮することが必要である。

2 設備

これからの図書館には、紙媒体を中心とした図書、資料に加え、映像音響資料の拡充が求められることから、インターネット端末や映像機器を配したメディアスペースは、できるだけ充実させる必要がある。
例えば、映像音響資料の活用では、本県に関する映像を学校の1学年が全員で見て、学習するなどの活用の仕方が今後も広がることが予想され、それに対応するためには、映像設備を有した一定規模のスペースを用意しておくことが必要となる。
また、いわゆる自習スペースに関しては、学生や外国人、新たな知識を習得しようとする社会人などの利便を図るため、インターネット対応など利用方法に応じてタイプを分けながら確保することが望ましい。
さらに、利用者の利便性の向上や作業の迅速化、資料管理の合理化を図るため、ICタグや自動貸出機の導入など、日進月歩で発展する情報システムや図書館サービスに係る新技術を取り入れることが必要である。

3 活用

より多くの県民に、学習・活動しやすい環境を提供するとともに、効率的な施設利用を図るために、会議室、研修室などは、小さい部屋に区切るよりも、ある程度の広さを持っていて、利用の用途で区切られるようにするなど、施設としての作り・空間、また、利用する人や時間といった要素も入れて、施設設備の活用の仕方は柔軟性・弾力性を持たせるべきである。
特に、施設の利用時間に関しては、タイムシェアリングの考え方(※)を取り入れることが重要となる。
また、施設をできるだけ有効に活用するためには、休館日や休館時間帯においても、例えば会議室や研修室など施設の一部が利用できるような工夫が必要である。
※ 一つの施設を利用時間帯に応じて別の目的に利用しようという考え方

第6 新県立図書館の建設地

新県立図書館は、県民が日常的に利用する本県の知的基盤として、人を育て、産業の振興と地域の活性化を支え、山梨に関する情報を県内外に発信する拠点としての役割が求められる。
したがって、多くの人が集まりやすく、情報が蓄積される中心市街地へ整備することが適当であり、中でも、子どもや学生、高齢者、障害を持つ方の利用を考えると、公共交通機関が集中していることは、重要な立地上の要件となる。
一方、整備に当たっては、現県立図書館は早急な建て替えが必要であり、用地の確保が容易で早期に建設に着手できる既存県有地の活用が望ましい。
こうしたことから、新県立図書館は甲府市中心部へ建設すべきであり、「甲府駅北口県有地」は適地である。

おわりに

県は、この報告を受け、新県立図書館整備計画を策定し、来年度以降、建設に向けた本格的な準備に入ることとしている。
本委員会としては、この報告が整備計画の策定、更に設計・建設の段階において具体的な形として表れ、一日も早く新県立図書館が整備されることを期待するものである。
さらに、今後、開館までのプロセスに引き続き多くの県民が参画し、そのアイデアや意見を取り入れることによって、県民の視点に立つ図書館として整備が進められるとともに、開館後においても、県民とともに歩む図書館として親しまれ続けることを期待して報告の結びとする。

□ 新県立図書館整備検討委員会委員・経過等

1 委員名簿(敬称略)氏名役職・所属団体等摘要 2 経過・検討内容

編注・この文書のソースは山梨県教育委員会教育庁社会教育課(新図書館建設室)新県立図書館整備検討委員会 第8回検討委員会に掲載されている「新県立図書館整備に関する報告(PDF:45KB)」です。教育庁社会教育課新図書館建設室ホームページがあります。
山梨県立図書館サイトには新県立図書館整備事業ホームページがあります。
西暦の付加やWebページとしての文字変換をしています。リンク設定や見出しの表示指定などは編者によります。

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